和尚のひとりごと “若いアイデアをあふれさせながら”
もう十月もあと少しで
終わりを感じる日曜日、
青空の下、
風がそよいでいる境内です。
お参りに訪れる人も少なく、
またその静かさが心地よく、
こころに
安らぎと時間をとどけてくれます。
さて、
今日は、
近くのお寺さまで
晋山式(しんざんしき)が執りおこなわれ、
私も出席させていただきました。
宗派のちがう
曹洞宗のお寺さまではありますが、
ともに
おなじ旧見付宿のなかにあって、
長い歴史と
布教をつづけてきましたお寺同士、
ご案内をとどけて下さる…
そんな風に声をかけて下さることは、
とてもありがたく思います。
さて、
晋山式とは、
新しいご住職を迎えるお檀家さまたちが、
地域に社会に、
私たちの心のよりどころとして
新住職を披露される場です。
お寺にとりまして
数十年に一度めぐってきます
お祝いの一日です。
やはり、
お檀家さまにとりまして、
私たちの菩提寺のご住職として
心からお迎えをする儀式は、
とても荘厳でありがたいものです。
いまや、
和尚さまがおられないお寺も日本各地、
増えつつある現実。
なにかと
淋しさを覚える寺院の実態は、
これから益々増える傾向にあります。
それだけに
ご住職さまがおられないお寺にとりまして、
お寺を訪れましても…
日常から…
なにか哀しさが漂う境内ではないでしょうか。
それと、
やっぱり一番のところは、
たくさんのお金を支度して、
お檀家さまが新しいご住職のために
披露の式典、
『私たちの導きとして、
新しい和尚さまのことを世間にひろげる
お祝いの式典を執りおこなおうじゃないか』
と、心ひとつ、
お檀家の総意として言ってもらえる
お坊さまであることでしょうか。
『私たちは、
披露の式典は…執りおこないません、
住職の就任は、
書類上だけの手続きだけでお願いします』
と言われたなら、
修行を積まれたお坊さまでも
ちょっと
落ちこむかもしれませんものね。
ちなみに私ごとですが、
二十代で住職になりましたとき、
十年くらいを目処にして
晋山式を執りおこなうという
お檀家さまのお考えの通り、
私が三十歳を越えたとき
立派な式典を挙行して下さいました。
そして、
あのときおられたみなさまの多くが、
いまは…
仏さまの世界から眺めて下さっており、
私は、
いまの時代を生きながら、
若いお坊さまたちからご老僧と呼ばれて…
敬われる僧侶の上位、
その位までのぼり、
こうして今日も生きております。
境内をイルミネーションで飾るほど、
…若いアイデアをあふれさせながら。
そんな私も…
もう六十二歳が近づいてまいりました…和尚のひとりごとでした。
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