和尚のひとりごと “足下にはもう秋の風が”
日中、お盆の大法要が終わり、
8月15日の夜が訪れ
お線香の煙とともに御霊がのぼっていく。
西の彼方、
西方浄土へと向かうその流れは、
日本列島を包みこんでいる。
なんて
厳かな景色、
心が清浄になる日本の心の故郷がここにある。
三日間の時を過ごされた愛されている魂が
愛している人たちに抱かれて送られる。
小さなお子さんや、
この世に
まだまだやるべきことを残し生きている
縁ある人たちが、
ご先祖さまの魂を大事に抱いてお寺へと足をはこぶ。
このお寺と縁がある人も無い人も、
また
一年後の再会を約束して見送る。
…その美しい姿の足下を秋の風が通りすぎていく。
夕方から降りつづいた雨もあがり、
曇り空の
なんて優しい。
こうして
今年もお盆の季節が終わる。
秋の虫の鳴き声が聞こえるなか
ススキ揺れる街並みに人々はもどり、
また
明日からの命を信じて生きていく。
この人たちに幸あれと祈り、
私は、
お盆最後のお経を唱え終えて衣を脱いだ。
秋風に揺れる送り火の
なんて寂しくもあり、
明日を照らす導きであるのか。
この夜は、
『生きるとは』をあらためて感じる
夜でもある。
それを
今夜の私のお経で伝えられたなら、
和尚冥利に尽きるというものだ。
お経が終わり、
送り火の灯りが消えたのをみはからったかのように、
空からは雨が落ちはじめ、
境内では、
別れの涙雨と
久しぶりに帰ってこれた嬉し涙が
遅くまで降りつづいていた…合掌…和尚のひとりごとでした。
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